プロンテラ城前の堀に腰を下ろし、堀を流れる水の音を聞き、芝生をなでる柔らかな風を感じツヴァイトは目の前のノービスの話を聞いていた。
否、聞いていなかったというべきであろうか?
 
「・・・ってわけでツヴァイトさんを探してたのですよ!」
 
「・・・すまん。よく分からん」
 
「う〜ん。もうこの説明も5回目ですよ?もしかしてツヴァイトさんってあんまり頭よく・・・というかあんまり脳みそ使ってないんじゃないですか?」
 
今のって言い換えた意味あったか?
早くも思考するのを拒否し始めた脳みその片隅で目の前のノービスにツッコミを入れるツヴァイト。
とりあえず分かったのは目の前にいるノービスの名前が『みお』だということくらいである。
 
「う〜・・・。もっと話の分かる人がいいよぅ」
 
呻くみおの言葉にポンと手を打つツヴァイト。
 
「あ、いるいる。分かる人。ちょっと待っててくれい」
 
言うや否やセイントローブをまさぐりWis板を取り出し操作し始める。
 
〜数分後〜
 
「つまりみおさんは、『黒い玉』時代のギルメンのアサシンさんで今は結婚して冒険者を引退されてしまった『九瑠璃』さんの妹さんで、その九瑠璃さんに冒険者になるならツヴァイトさんを頼るようにと言われてプロンテラまでなんとかこれたけれども、うまくツヴァイトさんを見つけることができずに途方にくれてとりあえず叫んでみたらツヴァイトさんが出てきたんだけど、今度はそのツヴァイトさんがいまいち要領を得なくて、しょうがないので私が呼ばれて今に至るなのですね?」
 
「そうだったんだ」
 
「・・・私。何度もそう説明シタデスョ」
 
ツヴァイトに呼び出されたLieserlがまとめた話を聞き、顎に手をやりコクコクと頷くツヴァイトと脱力し首をうなだれるみお。
 
「とりあえず紹介するよ。こちら俺の相方でハンターのLieserl。んでこっちはノービスでみお」
 
よろしくなのです。と軽く頭を下げ微笑むLieserlとそれを見て慌ててペコンと勢いよく頭を下げるみおが好対照である。
 
「相方とかいいですね〜」
 
背中に背負ったバッグを芝生に下ろしみおが言う。
 
「なのですね〜。みおさんもそのうちできるかもなのですよ?」
 
Lieserlが笑みを浮かべ言う。
 
「どうですかね〜?」
 
苦笑を浮かべ頬を掻く様な仕草をするみお。
その言葉に反応したかのようにみおの脇で大人しくお座りしていた子デザートウルフが吼える。
 
「おや。相方が自己主張してますが?」
 
ツヴァイトがニヤニヤと笑いつつ八房に目を向ける。
 
「あは。ごめんね。お前も大切な相棒だよね」
 
みおは八房の頭を撫でてやる。
 
その後も3人はとりとめもない会話を交わしほどなくして日が傾いてきた。
 
「っと、暗くなってきたな。みおたんは家、つーか宿はとってあるん?ついでにどこで狩ってるの?」
 
「はい。とりあえず今日は『ネンカラス』ってところに予約してあります。狩場は・・フフフ、秘密デスョ。崖の下、とだけ言っておきますデス」
 
「崖の下??ま、いっか。しかし『ネンカラス』ってどっかできいたよーな・・・。あ、もなさんが元々根城にしてたとこか」
 
「?。とりあえず今日のところはもう宿にもどりますね〜」
 
勝手に自己解決してしまったプリーストを不思議そうにみやりつつも宿へと向かうべく歩を進めるみお。
 
「あ、その前にこれをどうぞなのです」
 
Lieserlが立ち去るノービスに手を差し出す。その手にはよく鍛えられたマインゴーシュが握られている。
 
「い、いや。いいですよ。こんな高そうな物」
 
「どうぞなのです」
 
「いえだから・・・」
 
「もらってくれないなのです?」
 
「あ、あの、だから・・・」
 
笑顔を張り付かせたまま手を引かないLieserl。
みおは助けを求めるようにツヴァイトに顔を向ける。
ツヴァイトは後ろ髪をボリボリと掻きつつ
 
「あ〜・・・。とりあえずもらっとけ。終わらないから」
 
と、困惑顔のノービスに助言する。
この相方は変なところで強情なのである。
 
「分かりました。じゃ、遠慮なくもらっちゃいます!この恩はいづれ必ず!それでわまた!!」
 
嬉しそうにそのマインゴーシュを胸に抱きノービスはペコンと頭を下げツヴァイト達に背を向けプロンテラの雑踏の中に消えてゆく。
 
「元気なノービスさんなのですね〜」
 
「俺らもああいうときがあったねぇ」
 
みおの消えていった方を見やり目を細める2人。
 
「また会えるなのですかね〜?」
 
「どうでしょね?結構また明日会っちゃったりするかもっすよ」
 
相方の疑問にツヴァイトは冗談交じりに答える。
もちろんこの時点ではまさかほんとに次の日に、しかもトラブル付きで、会うとは思いもしなかったのである。
あるギルメンとの出会い
〜2〜
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