〜 第四章 「最高のレア」 〜
 
 
「いやぁ・・・キタね」
「だな」
 顔を見合わせニヤつく2人の男。
 2人はプロンテラの南門を抜けたところにある大きな岩を背にして腰を下ろしている。
 1人はツヴァイト。もう1人はその友人のアサシン、トウゲンである。2人は冒険者になる前からの知り合いで歩む道こそまったく違ったものの、今でも機会があれば共に冒険に出かけたりもしている。もっともこの日は別に申し合わせたわけではなかったのだが偶然2人とも時計塔地下4Fでそれぞれ1人で狩りしてるところでバッタリ会ってその場でパーティーを組みしばらく共闘し、あるモノが出たので満足して帰ってきた、というところである。
「何年冒険者としてやってきてもレアの出た瞬間の嬉しさは変わらんね」
「特にこのクラスのレアは、な」
 言いつつ懐から1枚のカードのようなものを取り出すトウゲン。その懐から取り出した人間の手のひらサイズのちいさなそれこそが今回の「お宝」だった。
「これがジョーカーカードかぁ。正直初めて見たよ」
 トウゲンが手に持ったそのカードを覗き込むようにして見ながらやや興奮気味に言うツヴァイト。
「まあ、どう叩き売っても1000万zはくだらないな」
 努めて冷静な口調で答えるトウゲン。もっとも口元の緩みがその努力を台無しにしている。
「ということは2人で分けても最低500万zか・・・。お前何に使うよ?」
 体勢を戻し再び地面に座り込みつつ楽しげに尋ねるツヴァイト。
「そうだな・・・。とりあえずコック帽子だろ。あとパンダ帽にポリン帽。ゴブリン族の仮面も欲しいな」
 指折り数え言うトウゲン。
「・・・それ、どうすんの?」
 あきれた顔で問うツヴァイト。今、彼が挙げた物はまず冒険に必要のないものである。完全に趣味といって言い。個人的には野郎が被るのもどうかと思う。ゴブ面に至ってはまず好きで被る人はどうかしていると思う。
「とりあえず付けてみたいと思うんだがどうだろう?」
「・・・好きにすれば」
 脱力し答えるツヴァイト。長いこと付き合っているがこのアサシンはよく分からない。とりあえずプロンテラの衛兵の仕事を増やさない程度に怪しいカッコをすればいいと思う。
「そういうお前はどうすんのよ」
 カードを手にもったまま今度は逆に問い返すトウゲン。
「俺?そだな。火スタナーが欲しいからそれにしよっかな」
「お前、過剰に精錬した火スタナーもってたろ?
「あれは星が入ってないから今度は入ってるやつを過剰精錬する」
「・・・ま、本人の好きにすればいいな」
 スタナーとはプリーストのみが扱える武器でブラックスミスが製造する火・水・風・土の属性を付与できるプリーストが装備できる武器の中では最強を誇る。もっとも一般的にツヴァイトのような殴りプリは少ないし、ましてや普通に修行している殴りプリならば武器に聖属性を付与する『アスペルシオ』のスキルを99%まで取得しているためそこまで属性スタナーにこだわる必要はなかったりする。
 まぁツヴァイトの場合、たんにスタナーが好きなだけ、というのもあったりするのだが・・・。
「しっかしこんな1000万z以上もするようなレアな、価値のあるなにかを手に入れたことってある?」
 これ以上のものとなるともはや数えるほどしかないので当然今回が最高だろう、と頭の中ではトウゲンの「いや、今回が最高だ」という答えにたいする同意の言葉を用意しつつ問うツヴァイト。
「あるよ」
 即答するトウゲン。
「ぇ。あるの?」
 予想外の答えに驚くツヴァイト。
「別にものじゃなくてもいいんだろ?」
「べ、別にかまわんが・・・」
「なら相方だな」
「へ?」
「だから俺の相方だよ。姫のこと」
「あ、あぁ。なるほど。姫さんね」
 姫というのはトウゲンの相方のことである。結婚はまだだったが確かもう婚約までしてたはずである。つまりは冒険者としての相棒という意味以上の意味での相方である。しかしこういうことはもうちょっと照れて言ってくれればこっちもからかいがいがあるというのに・・・。
「お前だってそうだろが」
 黙ってしまったツヴァイトに対し苦笑を浮かべ言うトウゲン。
「?。いや。今回のが最高だが?」
 不思議そうに言うツヴァイト。
「お前なぁ・・・。ま、いいけどな。ゆっくりやってくれ」
「だからなんのこと・・・」
「か〜んちょ♪来たよ〜。おっと。ツヴァたんも一緒だったんだ〜」
 何事か言いかけたツヴァイトの言葉を遮るように頭上から声が降り注ぐ。振り仰ぐと1人の女のプリースト両手を体の前で組み笑顔を浮かべ立っている。
「お〜姫〜。来てくれたんだ〜」
「エヘヘ。臨時のパーティーの清算中だったんだけどね。艦長に呼ばれたから抜けてきちゃった♪」
「そっか〜ゴメンね〜姫」
「抜けるなよ・・・」
 ぼそっと呟くツヴァイト。間違いなく別世界に行ってしまっている2人には聞こえてはいないだろう。
「というわけでなんか偶然にも姫が来ちゃったので2人でどっか行って来るわ。カードの方は捌いとくよ」
 すばやく立ち上がるトウゲン。
「・・・偶然なのか?」
「偶然よん♪」
「・・・」
 ツヴァイトの素朴な疑問は間髪入れず女プリーストに潰される。・・・どうも女のプリーストってのとは相性が悪い気がする、とツヴァイトは不意に思った。
「ま、いってらー」
 座り込んだままヒラヒラと手を振るツヴァイト。
「じゃ、またなー」
「ごめんね〜」
 姫と呼ばれたプリーストがどこかへと続くワープポータルを開く。2人の男女はほぼ同時にその光の中へと姿を消した。
「・・・さて、1人で狩りって気分でもないしな」
 しばらく考えたあとなんとなくWIS板を操作しギルドの情報を呼び出す。ツヴァイトの所属するギルド「RagnarokWalker」のメンバーの一覧とその強さを表すレベルが表示される。順にその表を見ていたツヴァイトの目があるメンバーのところで止まる。
「まだ70か・・・でも他のメンバーも忙しそうだしな。それにギルドメンバー同士、やっぱできるだけ組んでおいたほうがいいよな。うん」
 誰にとも無く言い訳らしきものを口にしつつそのメンバーへと連絡を取る。
「え〜っと、ツヴァだけどもし暇ならどっか一緒に行きません?や、忙しいなら別にいいんですけどね。やっぱメンバー同士組んで・・」
「はいなのです〜」
 
 その後、ツヴァイトはこのハンターと自他共に認めるコンビとなるが「自」の部分をツヴァイトが意識するようになるのはまだまだ先のことである。
 
 
 
〜あとがき〜
 トウゲン&その相方の姫さんのお話。一緒にいるといつもラブンラブンで近寄りがたいですノノ) 最近、予行演習なのかサブキャラで結婚した模様。とりあえずおめっと〜^0^)
 文中のものははとんどノンフィクションなので手抜きっちゃ〜手抜き^^;
 ラストのツヴァリゼのやり取りは「出合ったのはツヴァリゼの方があっちよりずっと早いけどまだこんなことやってた」というのを表してたり。
 しかしジョーカーカード、今は安くなったよねぇ^^;10Mとか軽く切って露天に並んでますもんね=w=)b
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