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 彼らの目に飛び込んできたのは、体ごとぶつけるようにソードメイスを男の体に埋め込むシルクハットを被ったプリーストの姿だった。ソードメイスの刃は男の左胸を捕えその背まで貫いている。その間には男の心臓がある。
 
「そこまでよ!ツヴァイト!!」
 うけひめが右手の人差し指をツヴァイトに突きつけ叫ぶ。
「プリーストながらに自らの欲望のために人を斬るその非道なる行い。例え天が許しても私が許さないわ!」
「や、たぶん天も許さないかと」
 右衛門が小声でツッコムがうけひめの耳には届いてはいないだろう。
「ツヴァイトさん、上!!」
 突然Lieserlの声が響く。ツヴァイトは考える間もなくソードメイスから手を離し後方に体を投げ出す。ツヴァイトが一瞬前までいた空間を削り取るような一撃が通り過ぎる。ソードメイスに胸を貫かれたまま男がその左腕を振るったのだ。そのままいれば恐らくは即死だっただろう。
 ツヴァイトは体勢を立て直しLieserlの元へと戻る。
「なんなんだお前らは!!」
 ツヴァイトが自分の右腕を左手で押さえヒールを唱えつつ言う。さきほどの一撃が腕をかすめていたのだ。それだけでツヴァイトの右腕上腕部の肉が削られるようになくなっている。
「辻切りの犯人の容疑者のアナタをつけてたんです」
 と、LB。
「ならどっちが犯人かみりゃ分かるだろ!とりあえず手伝ってもらうぞ!!」
 男に指を向けつつツヴァイトが言う。男の左腕はもはや肩口まで剣と同化している。そしてその筋肉は異様な盛り上がりを見せている。
「どうやら俺らが間違っていたみたいだね」
 言いつつ右衛門が弓を構える。もちろん目標は左腕が異形化した男の方である。
「そのようですね」
 LBもカタールを構え一歩前へ出る。
「わ、わかったわよ。でも後でちゃんと説明しなさいよ!」
 うけひめも聖書を開き戦士達を支援すべく呪文を詠唱し始める。
 
 そして戦いが始まった。
 
 
「神よ!戦いに赴きし戦士に祝福を!!」
「我等が戦いに正義あり。天使よ。我等が勝利のために歌いたまえ」
 うけひめのブレッシングが戦士たちに力を与えツヴァイトのグロリアが戦うための勇気を与える。
 支援をうけLBが両手のカタールを構え男に向かい走る。
「ギぃィルぐルゥォォ!!」
 もはや人語と呼べるかどうかも分からない叫びを上げる男。その筋肉が更に膨れ上がる。その姿は醜悪というほかない。男は右手を振り上げ向かい来る小柄な暗殺者を叩き潰すべくその手を振り下ろす。その手がLBの残像を捉える。
「モッキンか」
「そうよ。びっくりした?まっ、びんぼーにんには持てないアイテムね」
 呟くツヴァイトになぜか自分のことのように自慢げに答えるうけひめ。
 モッキングマフラー。モンスター、ウィスパーの魔力を持つそのマフラーは使用者の残像を見せ、敵の間合いを狂わせる力を持つ高額なアイテムである。
 ツヴァイトはそれには答えず戦況を見つめる。男の攻撃は協力で一撃でもまともにもらえば小柄なLBなどそのまま消し飛びそうなものであったがLBの動きはそれにもまして速く余裕を持ってその攻撃を回避し浅いながらも確実にカタールを男の体に当てている。
「あれではダメなのですよね」
 Lieserlが言う。ツヴァイトがそれに頷く。うけひめと右衛門が不思議そうな顔をするが理由はすぐに分かった。
 男の傷がダメージを与えたそばからすぐに塞がっていっているのである。
「厄介ですね」
 いつの間にかLBが男から離れこちらにもどってきている。気配を感じさせないあたりやっぱりアサシンなんだな、とまったく状況に関係ないことを考えるツヴァイト。
 男との間合いが空くと右衛門がすばやく矢を男に撃ち込んでゆく。その動作には淀みがなく矢をつがえてから撃つまでの動作に無駄がない。右衛門が撃ち始めるとそれまで彼の頭上で羽ばたいていたファルコンも男の周りを牽制するように飛び回っている。端から見ていたツアヴィトは右衛門がファルコンまで射抜いてしまわないか心配になったが右衛門とファルコンの息はピタリと合っていてその心配が杞憂であることが分かった。
「で、どうするの?彼、まったく効いてないみたいんだけど?」
 右衛門が矢を打ちつつ問いかける。彼の言葉の通り男の体に矢が刺さってこそいるもののしばらくすると再生した肉に押し出され矢は地面におちている。どう控えめにみてもあまり効いている様子ではない。ただ男も前進することまではできないようである。それも時間の問題のようであったが・・・。
「ちびちびやってだめなら一気に大ダメージを与えてケリつけるしかないね」
 ツヴァイトが言う。
「具体的にはどうするの?」
 問ううけひめ。
「それは俺に考えがある・・・が、とりあえずアイツの懐まで飛び込まにゃならん。アイツの注意がどっか逸れればやれそうなんだが・・・」
 が、正面にいる敵の注意を逸らすなどというのは言うほど簡単なものではない。
「・・・注意を逸らせばいいんですね」
 LBが言う。
「あ、あぁ、そうだがどうやって・・・」
「くるよ」
 言いかけるツヴァイトの言葉を遮るように右衛門が言う。
 速射による攻撃に驚きこそしたもののそれほどのダメージはないと判断したのか男が異形化した左手で顔を覆い突っ込んでくる。下がる右衛門。
「ちっ。とりあえずよくわからんが頼むぞ」
 それを見てツヴァイトも男に向かい突っ込んでいく。それにピッタリ付くように走るLB。
 両者の間が詰まり互いの間合いに入る直前、
「失礼します」
 律儀に言いツヴァイトの肩に足を掛け、跳び、男の頭上を越えるLB。
 月をバックにそのシルエットがくっきりと浮かび上がる。
 そのまま綺麗に空中で一回転し男の後方に着地する。その体が一瞬淡い光に包まれる。うけひめが掛けた速度増加だろう。
 素手のツヴァイトはそれほど脅威でないと考えたのか男は迷いなく振り返りLBがいるであろう空間を一撃する。石でできた道が粉々に砕け散る。が、LBはすでに男の懐に入り込んでいる。その動きを捉えることが果たして何人ができたか。
「ソニックブロウ」
 呟き驚くべき早さでLBが男に8連撃を加え、そのまま間を置かず後方へ大きく跳ぶ。それを合図とするように男の胸から血が噴き出し地面を朱に染める。男が苦痛とも怒りともしれぬ声を上げる。
『ブリッツビート!!』
 右衛門とLieserlの声が重なる。2匹のファルコンがツヴァイトの頭上を越え男に襲い掛かる。金色に輝いた2匹の優秀で獰猛なハンターが男の背をズタズタにし更に男に苦悶の声を上げさせる。
「さて、返してもらうね」
 痛みにのたうつ男の懐に飛び込み自らの武器に手をかけるツヴァイト。
 その胸に刺さったままになっているソードメイスに。
「マグナムブレイク!!」
「レックスエーテルナ!!」
 ツヴァイトの胸にあるクリップが光りを放つと同時に男の周りに特殊な結界が張られる。
 
 かくて夜のプロンテラに爆音が響き渡り・・・。
 
 
ここで終わりだけど・・・後日談がある^^; もちょっと書かせてくださいm(_ _)m
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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