「優しき死神」 
 
 
「あいつだろ。死神って」
 
「あいつが入った部隊は毎回あいつを残して全滅してるんだってな」
 
「ギルドの方もやつが入ったところは全てマスタが失踪したりして解散しちゃうらしいよ」
 
 
 
「ふむ。ま、こんなもんかな」
 
ツヴァイトは構えを解き自分の稽古の相手をしてくれていた騎士に声を掛ける。
騎士はちいさく頷き騎乗していたペコペコから降りそのペコペコにちいさく、ご苦労だったな。と声を掛ける。ペコペコは嬉しそうに一声鳴くと嘴を騎士の胸のあたりにこすりつけるような仕草をしている。
 
(よく懐いてるなぁ)
 
ツヴァイトはその場に座り込みその様子を眺めていた。かなり自分が疲労しているのが分かる。
申し合わせ一切無しの試合形式での稽古とはいえたかだか数分で肩で息をしているのも我ながら情けない。
 
「何をうなだれているのですか?」
 
凛とした声がツヴァイトの耳を打つ。その声にはもちろん疲労など感じられない。ツヴァイトが声に反応し顔を上げる。騎士は体にぴったりとフィットするシャツを着ていたためその輪郭がはっきりと分かった。胴から腰にかけてのゆるやかな曲線。胸は形のよい膨らみを見せている。
騎士は女性だった。
 
「たいしたことじゃないですよん」
 
ツヴァイトは再び視線を地面に落とし右手を無意味にヒラヒラさせる。
そうですか、と女騎士はちいさく呟きツヴァイトから少し距離を置いて自らも地面に腰を下ろした。その動きに合わせて背中に無造作に流しているだけの青色の髪が揺れる。
 
「えっと、もなむーさんが使ってるその剣。それってあの村正ですよね?」
 
静寂を嫌うようにツヴァイトが口を開く。確かなにかとイワク付きの剣だった気がする。
聞いた話では使い手に強力な力を与える代償にその使い手の大事ななにかを奪っていく、と聞いたが・・・。
もなむーと呼ばれた女騎士は自分の腰のあたりに吊るしてある剣に目をやり頷く。
 
「ええ。そうです。私は今までいろいろな戦場で生き残ってきました。しかしその代わりとなるように仲間達は死んでいきました。恐らくはそれこそがこの魔剣の魔力なのでしょう。知っていましたか?私が入ったはギルドはどれもマスターが失踪してしまったりして解散してしまうんですよ」
 
自嘲気味の笑みを浮かべもなむーは剣から目を離す。
 
「ふむ。ま、偶然が重なっただけって気もしますけどね。確かその剣、壊すことはできませんでしたよね?じゃ、んな剣、捨てちゃえばいいのでは?」
 
ツヴァイトが言う。そんなアブナイ剣をわざわざ持つ必要はないように思える。
 
「でもそうしたらまた次にこの剣を使う別の人が同じ目に合うでしょう?」
 
「・・・まぁ、そうかもしれませんがね。」
 
ツヴァイトはあまり気のない風に言う。自分はそこまで善人ではない。目の届く範囲の人が助けられればそれで十分だしそれが精一杯だと思う。
 
「ま。あれです。ウチのギルドはオレがマスターやってる限りんな簡単には無くなったりはしませんよ。って、もっとかっこいいセリフが言えそうな場面なんだがなあ」
 
ツヴァイトはそう言うと1人でブツブツ言い始める。
 
「『かっこいいセリフ』はその本質は相手に伝わりにくいものですよ。飾りの方に目が言ってしまいますからね。だいじょぶですよ。ツヴァイト君の言うことはちゃんと相手に残っているはずですよ」
 
微笑を浮かべ言うもなむー。
 
「そ、そうですか。っと、そろそろ同盟の皆が酒場に集まる時間ですね。ポタ開きますね」
 
ツヴァイトは照れたように早口に言ってギルドの溜まり場である酒場の目の前に繋がるポータルを開く。自らのペコペコと共にすばやくそれに乗り姿を消すもなむ〜。
 
「しかしそうは言ったものの、やっぱりなんかこうかっこいい決めセリフとか欲しいよなあ。なんかいいのないかな?めてお」
 
ポタに消えたもなむーを見送ってから足元にいるどろっぷすに話しかけるツヴァイト。
 
「あの狩りの最後の方に言う『じゃラストスパート〜』っていうのは違うッスか?」
 
「あれは別にかっこよくないぢゃん。もっとかっこいいヤツplz」
 
「『絶好調ッス』とかどうッスか?」
 
「それオマエの口癖ぢゃん」
 
そんなやり取りを交わしつつ1人と1匹もポータルの光の中へと身を躍らせる。
光を抜ければ仲間達がいる。
変わらぬ笑顔で迎えてくれる仲間達が。
 
 
 
〜あとがき〜
 
ゲーム上の彼女の職位「らいとにんぐなんたら」は元々は「Lightning Quicker」(スペル違うかも)とツヴァが付けたものを自分で登録するギルメン登録表の自分の職位部を彼女が「らいとにんぐなんちゃら」としていたので「よ〜し。キミの職位はそれなんだな。ならそうしてくれわ!」とツヴァがそのように変更したもの・w・)b なかなか人気のある職位でマスター的にはとても複雑orz
 
ちなみに文中の村正は売っちゃったらしい。で、その金はバフォ帽になり、そのバフォ帽はクホホ・・となってしまいましたとさ。
ほ〜ら魔剣の呪いだ〜ノ・w・)ノ
  
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