〜 第一章  「まだ立ち止まることは」 〜
 
「おめー」
「おめでと〜」
「ありがと〜」
仲間達の祝福を受け笑顔で答えるツヴァイト。もちろん祝福されるのはうれしかったが同時に得体のしれない脱力感にツヴァイトは襲われていた。
(なんなんだ。この感じは?)
答えはすぐに分かった。
 
 オーラを纏うようになった次の日。
 ツヴァイトはいつものようにゲフェンのベンチでぺっとのドロップスのめておと共に日向ぼっこに勤しんでいた。
「ずっとダンジョンにいたんじゃひまわりも枯れちゃうもんねぇ」
「そうッスねぇ」
 そんな怪しい会話を交わす1人と1匹の前を1次職の5,6人のパーティーがぞろぞろと連れ立って通り過ぎてゆく。
 恐らくはゲフェンダンジョンへの狩りへ行くのだろう、と彼らの装備やLvを察しツヴァイトは見当を付けた。そしてそのまま彼らの会話を聞くとも無しに聞いていた。
「・・・俺、今日でまた新しいスキル使えるようになるぞ」
剣士の少年が鼻息も荒く喋っている。
「あら、私だってもう少し修練を積めばもっと強い癒しの力を得れるわ」
アコライトの少女がそれに応じる。
「よし、じゃみんな準備も整ったみたいだし行こう」
マジシャンの青年が他の皆をまとめるように言うと他の面々はそれぞれそれに応えダンジョンへの入り口となるゲフェン中央塔の門をくぐってゆく。
 ツヴァイトはその会話で自分が今感じている脱力感の理由を悟った。
 
       目標の喪失。そしてもうこれ以上は強くなれないという事実。
 
「なぁ、めてお。俺はもう冒険者として終わった人間なのかな?」
1次職のパーティーがくぐっていったゲフェン中央塔の門に目を向けツヴァイトはめておに問いかける。めておは呆れたような声で言う。
「ご主人様・・・。先日ご主人様の相方のリゼ様がおっしゃってたじゃないッスか。えっと、なんでしたっけ。確か『止まってるよりも〜・・』」
「あ〜そうだそうだ。そうだったな。」
ツヴァイトが焦ったようにめておのセリフを止める。こんなところでみなまで言われてはたまらない。
「そうだよな。うごいてりゃなんかいいこと見付かるよな。よし。とりあえず言った本人に責任取って貰おう♪」
言いつつツヴァイトは一転して楽しげにWIS板を手に取る。
 そんな気分屋な主人を見上げめておはそっとため息をついた。
(俺のエサはもうちょっと先になりそうッスね)
 
 
 
〜あとがき〜
 記念すべき最初のショートストーリー。実は我がツヴァイトのペットのドロップス「めてお」とツヴァイトの絡みを書きたかっただけだったり^^;
 文中でリゼさんがツヴァイトに向かって言ったとなっている「止まってるよりも〜」はノンフィクション。リゼさんには珍しく多弁に励ましてくれたので印象に残っている。
 ちなみに一番上にあるSSはゲフェ街中で周りに誰もいないのを確認して撮ったもの。ちょっと恥ずかしかったりw
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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